糖尿が原因の体臭や口臭?

糖尿が原因の体臭や口臭?

自分では気付きにくい、体臭や口臭。「もしかして、周りの人に嫌な思いをさせているのでは」と不安を感じたことがある方は少なくないはずです。体臭や口臭の原因にはさまざまなものがあり、実はそのひとつに“糖尿病”があげられます。

そこで今回は、糖尿病と体臭・口臭の関係性についてご紹介します。

そもそも、体臭はどうして発生するの?

体臭の主な原因は、汗や皮脂などです。皮膚には汗腺と皮脂腺があり、汗と皮脂はここから分泌されます。ただ、分泌されたばかりの汗と皮脂は、ほぼ無臭で体臭に大きな影響を与えません。では、何が原因でこれらを嫌なニオイの元にしてしまうのでしょうか。

皮膚には、皮脂と水分が合わさってできた皮脂膜があり、ここには皮膚常在菌(幾通りもの雑菌)が存在しています。皮膚常在菌が汗や皮脂に作用すると、これらに含まれるタンパク質や脂質、アミノ酸などが分解・酸化され、嫌なニオイのするガス(揮発性成分)を発するのです。

また、汗腺は2種類あり、それぞれに含まれる成分によってニオイは異なります。
ほぼ全身に分布しているエクリン腺は、運動した際などにかくサラッとした汗を出します。その汗のほとんどは水で、残りはアミノ酸や尿酸、塩化ナトリウム、カルシウムなどです。この汗に汚れが付着すると菌が繁殖しやすくなり、少しずつ嫌なニオイが発生します。これに対し、脇下や性器周辺に分布しているアポクリン腺は、脂質や脂肪酸などニオイの元になりやすい成分を含んでいる汗を出します。独特なニオイが特徴で、ニオイが強くなると「わきが」に発展します。

このように、一般的な体臭は、汗や皮脂が雑菌により分解・酸化されることで発生します。では、糖尿病における体臭にはどのような特徴があるのでしょうか。

糖尿病による体臭の原因について

糖尿病による体臭の主な原因は、“ケトン体”です。これは、糖尿病の体への影響が原因で体内に作り出されてしまいます。

糖尿病になると、膵臓から分泌されるホルモンのひとつ“インスリン”が不足します。インスリンは、糖の代謝をコントロールし、血糖値を一定の数値で保つ働きを持っています。そのため、量が少なくなってしまうと、糖からエネルギーを生み出すことができなくなり、代わりに脂肪やタンパク質を分解してエネルギーを確保するようになります。こうした過程で作られる物質が、ケトン体なのです。

ケトン体には“アセトン”と呼ばれる物質が含まれており、これは独特なニオイを持っています。ケトン体がエネルギーとなって全身を巡り、アセトンが呼気として、そして汗と一緒に排出されることで嫌なニオイを発してしまうのです。なお、ニオイの特徴には甘酸っぱさがあげられます。

ケトン体は糖尿病に限らず、過度なダイエットを行った場合などにも分泌されます。そのため、極端に食事の回数を減らすなどストレスを感じやすい生活を送ると、ケトン体による嫌なニオイを感じるケースがあるといえます。

実は悪者じゃない。ケトン体ってどういう物質?

糖尿病による体臭の原因であるケトン体は、その一方で人間が生きていく上で必須な物質でもあります。

“ケトン食”という言葉をご存じでしょうか。これは、糖や炭水化物を減らし、その分脂肪を増やした食事のことで、主にてんかんの食事療法として活用されています。そんなケトン食がてんかんの治療に使用されている理由には、ケトン体の発作を起きにくくするという特徴が大きく関係しています。

腸高脂肪食であるケトン食は、脂肪からケトン体へと変換し、その後ブドウ糖に変化して、体や脳のエネルギー源となります。これにより、発作の予防をはじめ、元気や落ち着きを取り戻すなどの精神面への効果が期待できるのです。こうした点から、ケトン体はよい面も持った必要な物質だとわかります。

しかし、すべてのケトン体がよいものであるとは限りません。ケトン体は“生理的ケトン体上昇”と“病理的ケトン体上昇”の2種類に分けることができ、前者は生理的なものなので上昇しても特に問題はありません。ただ、後者は病気が原因でケトン体が上昇しているので、体に異常が起きていると考えられます。

例えば、ケトン体の基準値は26~122μM/lです。この数値は、3食以上の糖質をとっている条件の下で設定されています。しかし、糖尿病を発症している場合、糖質制限を行うことがあります。糖質をあまり摂取しないでいると、体は糖ではなく脂肪をエネルギーとするため、その結果ケトン体が2,000~4,000μM/lほどまで急激に上昇する場合があります。しかし、これは食事療法による上昇のため、体に悪影響が及んでいるということではありません。つまり、これは生理的ケトン体上昇なのです。

このように、ケトン体には体に無害のものもあります。体によいか悪いかを見極めるためにも、生理的と病理的どちらのケトン体が上昇しているのかをきちんと確認することが大切です。

体の異常をお知らせ!病気別にみる体臭と口臭

糖尿病に限らず、さまざまな病気が原因で体臭がひどくなってしまうことがあります。体から嫌なニオイを感じたら、それは病気発症のサインと考えられているので、常日頃から自身の体臭を気にかけておくことが大切です。

例えば、体臭を発する病気には甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)やパーキンソン氏病、蓄膿症、慢性中耳炎、肝臓病全般があります。それぞれでニオイの特徴が異なるので、あらかじめどのようなニオイを発するのか把握しておきましょう。

・肝機能の低下が疑われるニオイ
カビ臭い、またはニンニクのようなニオイを感じたら、肝機能が低下しているかもしれません。そもそも肝臓は、体内の毒素を分解する役割を持つ器官です。その役割を果たせなくなってしまうと、分解できなかった毒素が汗に吸収され、ニオイをひどくしてしまいます。また、口内で苦味を感じるといった症状を引き起こすケースもあります。これらの症状が悪化すると、体中からカビ臭さを感じることもあるので要注意です。

・呼吸器系の病気が疑われるニオイ
血を連想させるようなニオイは、呼吸器系の病気のサインである場合があります。鼻や喉、気道が炎症すると、口臭の原因である細菌が繁殖し嫌なニオイを発するのです。気管支炎や咽喉頭炎、副鼻腔炎、蓄膿症などの病気を発症している恐れがあるので、病院で検診してみることをおすすめします。

・胃腸器系の低下が疑われるニオイ
卵が腐敗したようなニオイは、胃腸器系の低下を知らせている可能性があります。なぜなら、胃や腸が働かなくなると、そこに食物が長い時間滞留してしまいます。これは異常発酵を招く原因であり、その状態を放置してしまうことで、腐った卵のようなニオイが出てきてしまうのです。さらに、胃や腸の機能が低下すると善玉菌がなくなり、それに伴い悪玉菌が増えてしまいます。これもまた、硫黄のようなニオイを発する原因のひとつです。

・肝臓障害の疑いがあるニオイ
アンモニアに似たニオイは、感情障害を表している恐れがあります。これには、肝機能低下による尿毒症が大きく関係しており、膿毒症はアンモニア臭を発する場合があるのです。そのため、自身からアンモニア臭を感じた場合は、積極的に医師に診てもらいましょう。

このように、病気により体臭や口臭がひどくなることがあります。体に異常が起きていないか見極めるためにも、日頃から体臭や口臭を気にかけておきましょう。また、もし自身から嫌なニオイを感じたら、医師に相談してみましょう。

■体臭だけじゃない!糖尿病による口臭の原因
糖尿病は体臭のみならず、口臭にも影響を及ぼします。その理由は、糖尿病になると口や喉の渇きを覚えやすくなるためです。以下で、そのメカニズムをご紹介します。

口臭の種類のひとつに、“生理的口臭”があげられます。これは、起床時口臭や飢餓口臭、緊張時口臭など、誰にでも当てはまる口臭のことを指しています。そんな生理的口臭の主な原因は、唾液分泌の減少です。口内の唾液の量が減ると細菌が増加し、揮発性硫黄化合物(口臭の原因物質)が多く作り出されてしまいます。また、唾液には歯を保護する役割もあり、唾液が減ることで細菌が歯に付着し、歯周病など口臭をひどくする症状を引き起こす恐れもあるのです。

“糖尿病になると口や喉の渇きを覚えやすくなる”、つまりこれは唾液の分泌が減少しているということです。そのため、糖尿病を発症すると体臭のみならず、口臭もひどくなってしまうのです。

この点を踏まえた上で、「唾液の量を一定に保つために、ジュースや清涼飲料水を飲もう!」と考えた方は注意が必要です。ジュースや飴玉、ガムなど甘い飲食物を口にすると、細菌をより増殖させてしまう恐れがあります。細菌の量が増えれば、その分口臭もひどくなります。そのため、甘い飲食物で口や喉を潤したあとは、必ずうがいや歯磨きを行うことが大切です。この一手間が、口臭を和らげるポイントになるので、徹底して行いましょう。

体臭・口臭に悩まない!糖尿病の予防法

糖尿病による体臭・口臭を予防するためには、糖尿病を発症しないよう注意することが大切です。以下で、誰でも気軽に取り組める糖尿病の予防法をカテゴリ別にご紹介します。

・過剰な飲食を避ける
食事におけるポイントは、“食べ過ぎ・飲み過ぎに注意する”ことです。食べ物や飲み物は体内でブドウ糖になり、それが血液中に入り込むことで血糖値は上昇します。この点から、食べ過ぎたり飲み過ぎたりすることは、血糖値の上昇を招く1番の原因といっても過言ではありません。そのため、常に適切な量の食事をとることが大切といえます。これに加え、食事と食事の間を5~6時間ほど空けることも大切です。

食事の量と時間の他、栄養バランスにも気を配るとなおよいといえます。食物繊維やタンパク質、脂質、ミネラルなどの栄養素を、バランスよく摂取しましょう。特に食物繊維は、血糖値の急上昇を抑える働きがあります。そのため、食物繊維が含まれている野菜や海藻、豆類、きのこなどは、積極的にとることが大切です。

・定期的に運動を行う
血糖値を下げる方法のひとつに、運動があります。運動を行うことで、血液中のブドウ糖を消費することができるのです。また、運動を定期的に行うことで筋肉が充実し、血糖値の上昇を抑えることもできます。ただ、これらの効果は運動を行った筋肉にしか現れないので、糖尿病を予防するには全身の筋肉をバランスよく刺激する必要があります。食事から1時間ほど経ったタイミングで、ウォーキングなどの有酸素運動を1日15~30分ほど、週に3~4日以上行いましょう。これにより、全身の筋肉がまんべんなく刺激され、運動による糖尿病の予防が期待できます。

・質の高い睡眠をとる
睡眠不足も、糖尿病を招く原因のひとつです。なぜなら、交感神経が刺激され血糖値が上昇してしまうためです。また、睡眠不足は疲労の蓄積によるストレスの原因となってしまうこともあり、これもまた交感神経の刺激につながってしまいます。そのため、6~8時間しっかりと睡眠をとることが大切です。ただ、このとき睡眠が浅ければあまり意味がありません。深く質のよい睡眠を6~8時間とることが重要なのです。

睡眠の質を高めるためには、規則正しい生活を送ることはもちろん、パソコンやスマートフォンなどの明るい画面を見ないよう心掛けることが大切です。また、寝る直前に食事をとるのも控えましょう。

・自律神経に効果的なツボを刺激する
糖尿病を発症すると、自律神経の異常により大量の汗をかくことがあります。糖尿病ならではの体臭に汗のニオイが加わると、自身のみならず周囲の人まで不快な気持ちにさせてしまう恐れがあります。これを防止するためには、まずは自律神経を整えることが大切です。その方法のひとつに“自律神経を正常に保つツボを刺激する”というものがあります。糖尿病、ひいては汗による体臭を予防するためにも、以下の手順でツボを刺激してみましょう。

1.足の親指(両方の爪の生え際)を3秒ほど押さえる
2.足の人差し指(中指側の爪の生え際)を3秒ほど押さえる
3.足の薬指(小指側の爪の生え際)を3秒ほど押さえる
4.足の小指(両方の爪の生え際)を3秒ほど押さえる

こちらの手順を左右2セット、1日2回ほど行うことで、自律神経を整えることができるといわれています。

上記でご紹介した予防法は、簡単に取り入れられるものばかりです。自身の今までの生活習慣をいきなりガラッと変えてしまうと、かえってストレスを感じてしまう恐れがあるので、まずはひとつずつ取り入れてみることをおすすめします。

早期発見を心掛け、病気そのものを改善する

・体や口から嫌なニオイを感じたら、それは病気のシグナルかもしれないので要注意
・糖尿病の場合は、甘酸っぱいニオイがする
・ニオイの元となっているケトン体は、糖代謝の異常により脂肪がエネルギー源として使用されることで発生している
・自律神経の異常が原因となる、発汗の嫌なニオイにも要注意

体臭や口臭は、体の健康状態のバロメーターといっても過言ではありません。そのため、「普段のニオイと違う」「普通じゃないニオイがする」など、自身の体臭や口臭に異変を感じたら、それは体の健康に異変が現れているサインかもしれません。自身で体に異常がないかを確認するのはもちろん、医師に相談するなどして、積極的に健康状態を確認するようにしましょう。また、自身だけでなく家族や友人など、周囲の人間の体臭や口臭に異変を感じた際も、忠告するよう心がけることが大切です。

加えて、糖尿病による体臭や口臭を予防するためには、糖尿病そのものを改善する必要があります。そのためには、肥満にならないよう注意する、暴飲暴食を避ける、ストレスをため込まないなど、改善の一歩となる正しい生活習慣にシフトしていくことが大切です。自身の生活習慣を今一度見直し、糖尿病を引き起こす原因をしっかりと排除していきましょう。そうすることで、糖尿病による体臭・口臭の改善、ひいては糖尿病そのものの改善が期待できます。

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