糖尿病を改善する治療法のひとつに、食事療法があります。食事療法の基本といえば、摂取カロリーや食事の内容の調整です。
今回は、糖尿病の食事療法における摂取カロリーや食事の内容についてご紹介します。
糖尿病患者のための食事の基本
糖尿病の食事療法において、まず意識しなくてはならないのが「摂取カロリー(エネルギー量)」です。糖尿病を患っていない一般的な成人の推奨摂取カロリーは、2,000kcalとされています。これに対し、糖尿病患者の推奨摂取カロリーは1,600 kcal。もちろん性別や年齢、運動量によって推奨される摂取カロリーの数値は異なりますが、糖尿病の方はそうでない方に比べ、やや少なめを意識してカロリーを摂取する必要があります。ちなみに、かけそば1杯は約300 kcalで、おにぎり1個は約180 kcalです。
次に意識しなくてはならないのが、「食事の内容」です。特に重要なのは、タンパク質、脂質、糖質それぞれの栄養素の割合です。食事内容の摂取カロリーに対するこれら3つの栄養素の比率を、「PFC比」と呼びます。糖尿病患者にとって推奨されるPFC比は55:25:20とされており、その割合を意識して栄養素を摂取する必要があるのです。タンパク質が全体の約2分の1を占め、残りの約2分の1を脂質と糖質で半分ずつ摂取するイメージで食事を摂るよう意識しましょう。ただし、日本人の場合は主食がご飯であるため、つい糖質であるご飯を多めに食べがちです。しかし、それは糖尿病患者にとって誤った食事内容であるため、注意が必要です。ご飯は、あくまで食事全体の4分の1程度に抑えておくべきです。タンパク質を食事のメインとして考え、脂質や糖質は副菜として考えるようにしましょう。
ここまでの内容は、糖尿病患者の食事療法における基本中の基本です。
糖尿病患者には、摂取することを忘れてはならない栄養素がふたつあります。そのふたつの栄養素とは、「亜鉛」と「マグネシウム」です。
糖尿病患者に亜鉛が必要とされる理由は、インスリンを作り上げる必須ミネラル成分のひとつが亜鉛だからです。亜鉛が不足すると、体の中でインスリンを作ることが難しくなってしまいます。インスリンが不足すると血糖値を下げることができず、糖尿病を悪化させてしまうため、糖尿病の方は積極的に亜鉛を摂取するようにしましょう。豚レバーや牡蠣などに亜鉛は多く含まれています。また、クロムフェリン食品と一緒に飲むことが推奨されている桑の葉食品にも多く含まれています。
一方、マグネシウムが必要とされている理由は、マグネシウムには2型糖尿病のリスクを軽減させる効果があるといわれているからです。これは、2004年にハーバード大学によって発表されました。糖尿病を患っていない方のマグネシウム濃度は、1mm程度といわれています。これに対し、重度の糖尿病患者のマグネシウム濃度は、0.66mm程度。糖尿病患者は、積極的にマグネシウムを摂取するよう心掛けましょう。ナッツ類やにがり、緑色の野菜などにマグネシウムは豊富に含まれています。また、上記と同様、クロムフェリン食品と一緒に飲むことが推奨されている桑の葉食品にも多く含まれています。
亜鉛とマグネシウムのミネラル成分は、通常であれば不足しにくい栄養素といわれています。しかし、糖尿病を患っていると多尿により排出されやすく、不足しがちになってしまうため、積極的に摂取するよう心掛けましょう。
お肉が糖尿病のリスクを高めるって本当!?
これまでの内容を見て、「タンパク質とミネラル成分を積極的に摂取すればいいのか」と思った方は多いかもしれません。
しかし、2013年、国立がん研究センターなどの研究グループによって気になる研究結果が発表されました。その研究結果とは、「赤身の肉を摂り過ぎると、糖尿病のリスクが高まる」というものです。約5年間にわたって、45歳~75歳の男女およそ64,000人を対象に追跡調査を行ったところ、肉類をあまり食べない男性グループに比べ、肉類を多く食べる男性グループの方が糖尿病の発症リスクが1.3倍~1.4倍も高まることが判明したのです。さらに、肉の種類別に分析すると、牛肉や豚肉の赤身肉に顕著な差が見られ、鶏肉やハム・ソーセージには差が見られなかったのだそう。どうやら赤身肉には、インスリン感受性やインスリンの分泌に悪い影響を与えかねない飽和脂肪酸やヘム鉄が含まれており、焦げた部分にもインスリンに悪影響を与える糖化最終産物(AGEs)が含まれていることから、赤身肉や焦げた肉を多く食べると糖尿病のリスクが高まってしまうのだそうです。
とはいえ、赤身肉は良質なタンパク源でもあります。糖尿病患者の食事の基本として、タンパク質は積極的に摂取しなくてはなりません。インスリンに悪影響を与えることなく上手に赤身肉を摂取するには、まず、焦がさないことが大切です。焼き過ぎることで肉や魚が焦げてしまうと、熱によってタンパク質や糖質が酸化結合し、「AGEs」と呼ばれる糖化最終産物という物質に変化してしまいます。この物質は、血管に蓄積することで体に大きな悪影響を与える「発がん性物質」といわれているのです。肉を焼いて焦げてしまった場合は、「もったいない」など考えず捨ててしまいましょう。
また、牛肉や豚肉などの赤身ばかりを食べ過ぎないことも大切です。牛肉や豚肉に見られる赤色は、「ヘモグロビン」と呼ばれる組織が発色したもの。このヘモグロビンを多く含む赤身よりも、適度に脂を含む霜降り肉の方がよいとされています。霜降り脂が適度にある赤身肉の種類といえば、「ロース肉」です。ロースとは、胸や肩部分の肉のこと。糖尿病の方が赤身の肉を食べる際は、ロースが最もおすすめといえます。次におすすめなのが、「ヒレ肉」です。ヒレとは、赤身が多く脂肪の少ない部位のこと。希少部位でもあることから高級品とされています。ヒレはロースに比べ赤身が多いことから、食べ過ぎには注意しましょう。あまりおすすめできないのは、「もも肉」です。もも肉は脂肪分がほとんどなく、ほぼ赤身であるため、食べ過ぎには十分注意しましょう。
糖尿病の方が肉を食べる際は、牛肉や豚肉などの赤身肉ではなく、ハムやソーセージ、鶏肉などがおすすめです。
まとめ
「赤身肉を食べ過ぎると糖尿病のリスクが高まる」という赤身肉と糖尿病の関係性は、近年発表された研究結果でもあるため、「はじめて知った!」という方は多いかもしれません。
今回ご紹介した内容を簡潔にまとめると、以下のようになります。
・糖尿病患者の推奨摂取カロリーは、1日1,600キロカロリー
・タンパク質、脂質、糖質の推奨される摂取比率は、55:25:20
・亜鉛とマグネシウムのミネラル成分は積極的に摂取
・赤身肉を食べ過ぎると糖尿病のリスクが高まる
・赤身肉を食べるならロースが最もおすすめで、次にヒレ肉(もも肉は控えるのが吉)
糖尿病の方や予備軍の方は、今回ご紹介した内容をしっかりと踏まえ、食生活に気を付けましょう。
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